タイヤ温度が与える影響

前回の「バイクのタイヤのコンパウンドの見極め方」の続きとなります。タイヤがグリップ力を発揮するための重要な条件に温度があります。

コンパウンドが路面との間でグリップ力を発揮するのはゴムが粘弾性体であるからです。そしてゴムがそうした性質を示すのは、ゴムに分子間運動があるからです。そのため、ある程度タイヤは温度が高くならないと、分子間運動も活発にならず、グリップ力を発揮できないのです。



寒い時にコンパウンドを爪で押すと固いことが解りますが、皆さんご存知の通りそうした状況では要注意です。
高グリップなタイヤほど、グリップ力を発揮できる温度域は狭いです。
その為レースではあらかじめ、タイヤをウォーマーで温めたりするのですが、もちろんストリートタイヤでもウォーミングアップは必要です。
普通コンパウンドの設定温度域は数十℃から100℃くらいまでの間にあります。
なので、手で触って心地よく暖かくなっているタイヤが走りにとっても良い状態にあると言えます。
また、スリックタイヤではなくパターンタイヤであっても、レース用に開発されたものは温度依存度が高いです。
メーカー側がカタログなどで謳う通り、レース用を主眼に開発したタイヤをむやみに公道で使うのは、しっかりタイヤの事を理解しておかないと逆に危険な目にあいかねません。



そこで注目したい事は、こうした温度依存性を改善するため、最近の高性能タイヤはコンパウンドにシリカを配合するものがほとんどになって来た事です。
ゴムの分子の補強材にカーボンブラックに加えシリカを用いることで低温時から分子間の動きに柔軟性が出て、低温時やウェット時のグリップも良くなっているのです。
タイヤにとっては、コンパウンドの摩耗も大きな問題です。
摩耗はタイヤの寿命にそのまま影響しますし、摩耗によるグリップの低下もあります。
一般に粘着摩擦の大きい柔らかいゴムは摩耗が早く、ヒステリシス摩擦の大きいゴムは、ヒステリシスロスが熱に変わっているので発熱が大きいと言えます。
その発熱が結果的にグリップ力の低下と摩耗を招く面もあり、いろんな要素が複雑に絡み合ってくるという事も覚えておいた方が、タイヤのコンパウンドを考える時は良いと思います。

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