バイクのグリップ特性とコンパウンド1

余談ですが、今回より題名が長ったらしくなるので題名から「構造と進化を知って上手くなろう」を外すことにしました。
どうも記事を書いていて自分でも回りくどいところがあるので、今日からはシンプルな題名で行こうと思います。


前置きはさておき、タイヤとはライダーとの相性の良し悪しがはっきり出てくるパーツだと思います。今のMotogpやWSBKのタイヤはワンメイクですが、一昔前はそうではありませんでした。
マシンをスイッチしても速く走れるのに、タイヤメーカーが変わった為、タイムが出せなくなり、自分のライディングをタイヤに合わせて走らねばならないライダーがザラにいました。

路面と接している唯一のパーツだけに、限界で走らせるときのタイヤの影響は、計り知れないものがあります。



例えば今、2つのメーカーのタイヤがあったとします。
どちらもスーパースポーツ用として人気の高い定評のあるタイヤで、サイズも同じ、溝の深さや溝の多さも同じ位だとします。
実際に2つのタイヤを乗り比べてみるとグリップの違いに驚いた経験は無いでしょうか?
喰いついたり滑ったりする性質が全く違うように感じたりします。
極端な場合、定評のあるタイヤでもライダーの好みが正反対になることもあります。
タイヤには走り始めた時から路面にへばりつくような手ごたえを感じさせる接地感のある銘柄があります。
しかし、調子に乗ってスロットルを開け過ぎるとズバッっと大きく滑ってしまうこともあります。
逆にそこまで接地感が無く割と早く滑り出すけれど、滑り始めても挙動が穏やかで結局はスムーズに速く走れてしまう銘柄もあります。

また、ドライ路面でのグリップはとても高いのに、ウエット路面だと一変し、ウェットパッチ恐怖症を発症するほど急に滑り出す物もあれば、比較的グリップ変化が少ない銘柄もあります。
そうした滑り味はコンパウンドの性質によって変わってくる割合が高いです。





オンロードにおけるグリップ力は、粘着摩擦とヒステリシス摩擦によって得られています。
以前の記事で書いた様にふたつのグリップ力には、全く滑らないよりも適度の滑りがある所で最大になるという性質があります。
ところが、二つのグリップ力が同じ滑り速度で最大になるわけではありません。
粘着摩擦力が最大になる時よりも、早い滑り出し速度でヒステリシス摩擦力は滑ることによって、ゴムに変形が生じて発生するので2つの摩擦力が発揮されるまでにタイムラグがあります。
その為、グリップ力としては同レベルであったとしても、二つのグリップ力のどちらかの依存度が高いかによってタイヤのグリップ力の特性が違ってきます。
つまり、滑り速度の比較的低いところで最大となる粘着摩擦力のウエイトを大きくすることで、接地感と初期のグリップレベルを高くすることができますし、もう一つのヒステリシス摩擦力を大きくしてやることによって、グリップレベルが多少低く滑り出しが早くても、そこからの滑り出しが穏やかでコントロールしやすい特性を生み出すことも理論上ではできるわけです。
勿論タイヤ開発の現場ではそんな単純なものではありませんがそうした傾向があるのは事実です。
長くなりましたので今日はこの辺で続きは次回にしようと思います。
次回はウェット時のコンパウンドの影響に触れたいと思います。

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