構造と進化を知って上手くなろう グリップ力って何だ?編6

前回は粘着摩擦とヒステリシス摩擦による恩恵を記事にしました。今日はタイヤと加重との関係を記事にしてみました。タイヤは垂直荷重をかける程グリップ力が大きくなりますが、それは比例関係にあるわけではありません。




荷重の増加と共に頭打ちになるという傾向を持ち合わせています。柔らかいゴムが路面の凹凸に入り込むものの、その噛み合いは荷重が増加するほどは大きくならないからです。



個体同士の摩擦ですと、垂直荷重とグリップ力は、比例関係にあります。
固体表面の細かい凹凸が荷重に比例して変形し、顕微鏡的に見た真の接触部分面積も荷重に比例して大きくなるからです。
もしタイヤがこのようなメカニズムだと困ります。
垂直荷重をかけることでグリップ力は大きくなっても、掛けられる荷重には限界というものがあります。
荷重に比例してグリップしても、いきなり限界が来てしまうのです。
バイクはコーナーではリヤにお尻から荷重し、トラクションを掛けながらライディングするものです。




リヤに荷重することでトラクションを掛けることができ、またトラクションを掛けて加速Gでリヤに荷重ができることで、さらにトラクションを強くすることができます。
そうすることでバイクは、リヤからどんどんまわり込んでいくようにできています。
しかし、徐々にかけられるトラクションはいずれ頭打ちになり、限界が近づいていることをライダーは知ることができます。
タイヤのこうした性質はライダーがトラクションをコントロールする事でリヤステアをも可能にしているのです。
この性質のおかげでタイヤによるマシンセッティングの可能性も広がりました。
個体同士の摩擦の様に垂直荷重にグリップ力が比例するのであれば、タイヤ幅を大きくしても、得られるグリップ力は同じです。
接地面積を大きくしても、その分、面圧は下がり真の接触部分面積は変わりません。
それがゴムだと面圧が下がった分だけグリップ力が小さくなるわけでないので、接地面積が大きくなればグリップ力は大きくなります。
つまり、タイヤサイズやリム幅を大きくして接地面積を大きくすることで、グリップレベルをマシンキャラクターやライディングにマッチングさせたり、前後のバランスを変えることによって、オーバーとかアンダーといったステア特性さえも、セッティングすることもできるのです。
こうした事に注目してみると、つくづくゴムが持つグリップ力の性質はライディングにとって好都合だと思います。
地上を走る乗り物が黒いゴムの輪を履いて今日まで発展してきた理由の一つにタイヤにはこういった性質があるからです。

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