構造と進化を知って上手くなろう グリップ力って何だ?編4

前回の続きとなります。
前回は少し物理的で難しい話になりましたが、少し単純に考えて言い直すと、タイヤを滑らせようとするエネルギーが熱に変わり、その結果としてタイヤは滑らずグリップすると考えてみてはどうでしょうか?

ゴムが振動していると言ってもピンとこないと思いますが、自動車ではタイヤがグリップ限界付近でキーっと鳴き出すことを思い出していただければ納得していただけるのではないでしょうか?

このようにグラフで二つの曲線が一致しない現象を専門用語でヒステリシスと言い、これによるエネルギー損失をヒステリシスロスと言います。その為こうした摩擦をヒステリシス摩擦と呼ばれています。ゴムはバネの様な弾性体であることに加え、ダンパーの様な粘性体としての性質をも併せ持っています。


そのため、ゴムを粘弾性体と呼びますが、そのおかげで摩擦力が生まれているのです。
結局タイヤのグリップ力と言うのは昨日述べたように、粘着摩擦力と、このヒステリシス摩擦力によって得られていて、粘着摩擦は路面とゴムの間に働く粘着力、そしてヒステリシス摩擦はゴムの動きのエネルギー損失によるグリップ力と言えます。
これらとは別に、路面が舗装路ではなく土や砂の上だった場合、タイヤのブロックパターンと路面との噛み合いによってもグリップ力が得られます。




これは、ゴムのブロックが引きちぎられないようにする抵抗力による機械的なグリップ力だと言えます。
こういう摩擦力を専門的に凝集摩擦と呼んでいます。
ただし、この凝集摩擦は舗装路面ではほとんど生じません。
要するに、ドライ舗装路面において溝の有無はグリップ力にあまり関係なく、オンロードタイヤを溝が広くて深いブロックパターンにしてもグリップ力が大きくなるわけではありません。
逆にブロックの変形が滑りに繋がってしまうこともあります。
グリップ力だけに注目すれば、タイヤが摩耗して溝の角が丸くなったところで必ずしも悪くなるものではないのです。
となれば、察しの良い人はもうお解りだと思います。
トレッドの溝を無くすことで実接地面積を大きくするとともに、トレッドの変形を無くしてソフトなコンパウンドを使用可能とし、粘着摩擦とヒステリシス摩擦力を目いっぱい稼げるようにしたタイヤがロードレースで使用されるスリックタイヤと言うわけです。

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