構造と進化を知って上手くなろう グリップ力って何だ?編3

グリップ力って何だ?編2では、タイヤのグリップ力の一つの大きな要素である粘着摩擦と言うものに付いて書きました。

接地面でトレッド面のゴムが引き伸ばされることによって、路面との間で吸い付く力が生じるというものです。


そして、グリップ力にはもう一つ粘着摩擦と共に大切なヒステリシス摩擦があります。
今日はそのヒステリシス摩擦を軸に書いて行こうと思います。

先日、タイヤのグリップ力はランニングでの靴底に例えると解りやすいと書きましたが、今回も靴底をイメージして考えていきたいと思います。
靴が地面に付き体重を乗せていったとき、軟着陸するかのように路面の凹凸にジワッとゴムが入り込むような感触をイメージしてみてください。
ここで大切なことは、体重を掛けた瞬間にゴムが凹凸に入り込んでしまうのではなく、ムニュッとか、ジワーっと抵抗を伴った感じで路面に入り込んでいく感じを想像してみてください。
注文が多くてすみません(汗)想像できましたでしょうか?
そして、その靴ですが路面から離れる時もゴムは遅れてジワーっと元の状態に戻ります。
ゴムがこのようにジワーッと変形しつつある状態で足を蹴り出していくと、その瞬間、ゴム自体が変形しているだけでなく、路面と接触することで靴底にわずかな滑りが生じ、ゴムは細かくビビることになります。
そのビビり方には抵抗感があって、それによって路面に重い感じで引っかかってくれるはずです。
消しゴムを机の上に擦り付けた時、グゥーっと音が鳴り、机と消しゴムの間に抵抗感を感じるのと同じです。
ゴムがジワーっと変形するのでなく、スッと変形した場合ゴムの変形は即座に路面の凹凸に沿ってしまうので、ビビりによるこうした抵抗感は生まれません。
擬音が多く説明が下手で、ちょっと理解しにくいかもしれませんが、もう少しゴムの変形に付いてもう少し着目したいと思います。




ゴムに力を加えて変形させると、力を加えても変形は遅れ、しばらくして変形が追いついてきます。
逆に力を取り去っても、変形はしばらくそのまま残っています。
その力と変形量の関係をグラフに表した場合、力を加えていく時と取り去って行った時の変形量の間にはズレが出て、両者は一致しません。
これがサスペンションの金属バネだと変形させていく時と戻すときの変形量は一致します。(もっと正確に述べるとそうではないのですが・・・)
サスではダンパーを加えることで、両者の間にズレが生じますが、ゴムの変形もそれと同じような関係だと言えます。
ゴムが路面にジワーッと入り込む感じと言うのは、圧側ダンパーに相応する効果だと言うわけです。
サスにおいて力と変形量のグラフでズレが生じるということは、サスをストロークさせようとするエネルギーの一部がダンパーに吸収され、熱エネルギーに変わっているという事です。
それがタイヤでは、タイヤを滑らそうにも接地面でゴムが変形して振動し、タイヤを滑らそうとするエネルギーが熱に変わるのです。
ちなみに、これがタイヤの発熱の大きな原因です。
タイヤを横に滑らせようにも、そこにはエネルギー損失が生じ、それによって摩擦力が発生しているというわけです。

今日はこの辺にしておきたいと思います。
次回へ続きます。

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