構造と進化を知って上手くなろう フロント周り編3

昨日はフロントタイヤの状態がグリップへ伝わってくるという事、そして保舵力がライディングやその誤りについて教えてくれているということについて書きました。
昨日の文末に書いた様に、バイクに乗っているときは、あまりその事を深く考えないでください!

あくまでも悩んだ時のヒント程度で頭に入れるだけで十分です!今日はライダーなら誰もが恐れるフロントグリップの限界について考えてみようと思います。


フロントタイヤが滑り始めたら、手の施しようがなく一気に転びやすいことは事実です。
でも実際はそのかなり前から滑りは生じているものなのです。

ただ、その滑りは接地面全体に一様に同じように生じ始めているのではありません。

以前書いた様に接地面は後方の部分が接地圧が高く、そこで高いグリップ力を発揮しています。
その部分からグリップの限界は訪れます。
荷重の増加に対してグリップ力には限界があるからです。
すると、後方部分のグリップ力が小さくなることによって、着力点は前方に移動しますから、ニューマチックトレールはどんどん小さくなります。
フロントのグリップ力に余裕がある状態であれば、ハンドルの手ごたえには、いわゆるリニア感があります。
だから安心感もあります。
セルフアライニングトルクはスリップ角に比例して変化するからです。
ところが、グリップ力が頭打ちになり始めるや、ニューマチックトレールも小さくなり始めます。そのため、グリップ力とニューマチックトレールを掛けたものである、セルフアライニングトルクは急激に減少し始めるのです。
さて、実際の走りではこれがどう表れるでしょうか?
褒められた乗り方ではありませんが、どんどん調子に乗ってバンク角を深くし、コーナーリングスピードを上げていったとします。
グリップ力に余裕があるうちは、攻めるに従い、保舵力はリニアに押し舵傾向が弱まるように変化していきます。
しかし、限界が近づいてくるとセルフアライニングトルクが急激に小さくなって、それを補うために、そのまま押し舵の保舵力を強く与え続けなくてはならなくなってくるのです。
これではまるで、タイヤが嫌がっているのを無理矢理 押し舵にして、さらにもうひと寝かせさせようとしているようなものです。
これは完全な危険信号です。
そう感じたら保舵力を弱めることです。
自然にバイクは起き、ラインがアウトにはらんで最悪の事態を避けられるはずです。
ステアリングでこじり寝かせる悪い癖が無ければ、本能的にそうした間違いを避けることができるはずです。
また、そうした対処の為にも、定常時の保舵力は弱押し舵でないといけないのです。
これを超えて無理をすると、着力点は中心より前方にまで移動し、ニューマチックトレールはマイナスに転じセルフアライニングトルクも逆向きになってしまいます。
復元トルクが切れ込みトルクになってしまうのです。
これによってステアリングは巻き込み、フロントはグリップを失って転倒してしまいます。
このように保舵力は限界も教えてくれているのです。

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