構造と進化を知って上手くなろう リヤステア編6

さて、昨日残したテーマ「なぜ近年のバイクのリヤタイヤがワイド化してきたか」を考えてみたいと思います。それを考えるには、バイクのリヤステア状態に注目する必要があります。


トラクションによってリヤに大きく荷重がかかると、大きくなる遠心力に対抗してリヤはコーナーリングフォースを大きくしなければなりません。
垂直荷重も大きくはなりますが、荷重の増加ほどに大きくはなりません。
そこでコーナーリングフォースを稼ぐためにスリップ角は大きくなり、リヤの軌跡はアウト側に移動します。
今一度コーナーリングフォースと荷重の関係に注目してみます。

コーナーリングフォースは、グリップ力とねじれ変形に対する抵抗力で決まってきます。
グリップそのものがタイヤにかかる垂直荷重に比例して大きくなるわけではなく、また荷重がある程度大きくなるとタイヤが変にたわみ、ねじれ変形への抵抗力が無くなってくるので、コーナーリングフォースは次第に頭打ちになっていきます。
ここで、タイヤが幅広偏平ラジアルだと、グリップ力が大きいうえに、ねじれ変形への抵抗力は大きく、荷重増加に対するコーナーリングフォースの増加分も大きくなります。
つまり、大きい荷重にも耐えてコーナーリングフォースを発生できるようにもなるのです。
極端な話、もしリッターバイクに125cc用の細すぎるタイヤを装着したら、ちょっとリヤに荷重しただけでタイヤは悲鳴を上げ、滑る以前に腰砕けになって、それ以上攻めることにタイヤは耐えられなくなってしまうはずです。
逆に太すぎると、荷重してもスリップ角は小さくてリヤステア効果が思うように得られなくなり、うまく曲がらなくなってしまいます。
つまりタイヤを太くするのは、荷重増大に耐えられる特性を求めての事なのです。
その事でリヤステアをより高いレベルでこなすことができるのです。
大きいパワーを伝えるだけではないのです。
タイヤは許容荷重ぐらいまではコーナーリングフォースが下降せずに発生できますから、その意味でもタイヤのサイズ変更の際は加重指数を考慮することが大事なのです。
近年、タイヤは幅広偏平化してきました。
それによって荷重感覚に見合った反応が得られ、リヤステアを高いレベルでこなせるようになってきました。
実際に、それが速さにもつながっているのです
250ccにはリッタークラスの幅広偏平タイヤを履いたホーネット250があります。
ただパワーを吸収するだけなら、こんな太いタイヤは無用です。
しかし、リヤステアを高いレベルでこなせるようになっていて、コーナーに侵入してリヤに荷重し、トラクションを与えるように仕向けられます。
その結果、ライダーは転ぶ気がしない程の安心感を与えているのです。
カスタム化において、リヤに太いタイヤを履かせるときは、そうした走りを前提に取り組まなくてはいけません。
また、一昔前のバイクのリヤタイヤを太くする場合は、増大するトラクションに耐えられるようにスイングアームを強化し、トラクションを安定して伝えるためにリヤサスペンションも吸収性を上げる必要が出てきます。
トラクション旋回を高いレベルでこなせるように、フロント荷重も要求されます。
まぁ簡単にまとめると要するに、全てのマッチングが必要と言う事です。

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