構造と進化を知って上手くなろう ブレーキ編1 制動力よりもコントロール性が大事な理由

現在のブレーキでは、MotoGPマシンやWSBK等の車両でも、現状以上に強力なストッピングパワーは要求されてないと言う話を聞いたことがあります。

その理由は、減速Gは最大でも1Gを少し超える程度で、バイクの特性上それ以上のブレーキングを行うと後輪が浮きジャックナイフ状態になったり、前転してしまうからです。


後輪が浮いた状態で、それ以上の減速を求めるのは非常に難しい事で、昔から今に至るまで「ブレーキはいかにライダーにフレンドリーにするか」と言う方向で進化してきました。



ブレーキの進化は主なブレーキの構成部品である、キャリパー・マスターシリンダー・パッド材質・ディスクローターで進化を見ることができます。
従来は横方向にボルトで固定されていたブレーキキャリパーは2003年モデルのZX-6Rを筆頭にラジアルマウント化されるように変わりました。


ラジアルマウントの場合、ボルトの取り付け方向がディスクの回転方向と同じであり、ブレーキング時の応力が掛かった時に、キャリパーやステーの変形が最小限にすむ形状になっています。
ハードブレーキングだけに恩恵があるのではなく、マシンをバンクさせた後のブレーキリリースでもスムーズにパッドがディスクから離れ、そのことからマシンの挙動を安定させる働きもあります。
また、摩擦熱で高温になることからキャリパーの材質も一般的にはアルミ鋳造品ですが、高性能キャリパーはアルミ合金のインゴッドからの削り出しにしたり、モノブロック化することによって、剛性を高めライダーにダイレクトな操作を与えています。




特にレースの世界ではモノブロックキャリパーが大活躍しています。
操作性に影響を与える他の要因としてピストン数があげられます。
今までの対向式キャリパーではピストン数は2~8個でしたが、現在の主流は4ピストンです。
制動力の観点からはピストン数は多い方が制動力が強いと考えられますが、レーシングマシンを含めて10年以上前から主流は4ピストンとなりました。
この理由は何か?
それは、4ピストンのブレーキタッチが一番安定しているからなのです。
マスターシリンダーの場合もレバー操作とピストン方向が同じであることから、パッドからのフィードバックがダイレクトに得られるだけではなく、ブレンボの様にレバー比を可変できることも可能です。


キャリパーとマスターシリンダーのピストンとレバー比率でブレーキレシオが決まるのですが、ブレーキのタッチには個人差があることから、個人差に対応することができるのです。




様々な種類のディスクブレーキ

カーボンディスク
MotoGPで使用されているカーボンコンポジットのブレーキ材料は摩擦面の高いμばかりでなく、軽量化にも役立っています。
しかし、作動温度が適正な値まで上がらないとブレーキが十分に機能しないので、ライダーはウォームアップラップとスタート後の第一コーナーを利用してディスクの温度を適切値まで上昇させる必要があります。
ちなみに、ドライでしか使えず、雨のレースではスチールのディスクに変更して走ります。


ウエーブディスク

2003年のZX-6Rでラジアルマウントキャリパーを量産車初搭載したかと思えば、2004年のZX-10R(写真は04じゃないけど・・・)で量産車に初採用したウエーブディスク。
外径をウェーブ化する事でローターの慣性を可能な限り小さくしようとする狙いがあります。

リムオンディスク

ビューエルでよく採用されるリムオンディスクはリムの外周に大型のディスクを取り付けています。
外径が大きい分高い制動力が生まれるのです。
ビューエルは倒産したと言う人がいますが、かつてハーレーダビッドソン傘下のスポーツバイク・ブランドとして知られた「ビューエル」の創立者、エリック・ビューエル氏によって新たに設立されたエリック・ビューエル・レーシング(EBR)としてバイクを販売しています。
正確に言うとEBRも一回潰れて最近復活した?みたいな話です。
写真の1190RXのブレーキパッドとディスクを冷やすエアダクトがカッコいいですね。





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