構造と進化を知って上手くなろう キャンバースラスト編2(本題)

さて、昨日より続くキャンバースラスト編ですが、本題に入っていきます。
では早速ですが、タイヤは何故曲がっていくのかを考えてみましょう。
バイクが曲がり始めるとバイクにはそのまま真っ直ぐ行こうとする慣性力、すなわち外向きの遠心力が発生します。

当然タイヤは、その遠心力に対抗するだけのグリップ力を発揮する必要があります。そうでないといきなりスリップダウンし、曲がっていくことはできません。でもその時タイヤはただ必要なグリップ力を発揮しているだけではありません。しっかりとした基準をもとに他の仕事もこなしているのです。



バイクが曲がるためには、バンクさせないといけません。
下向きの重力と外向きの遠心力が釣り合うように寝かせることがバイクの宿命です。
まずはタイヤだけに注目しましょう。
ホイールをバイクから取り外し転がしてやると、ホイールは傾いた方向に曲がって行こうとします。
タイヤには傾けただけで曲がって行こうとする性質があるのです。
タイヤのプロファイルは中央が膨らんだラウンド形状をしています。
そのため傾けると、接地面のアウト側の周長は長く、イン側では短くなります。
円錐形のコロを転がすと頂点側の方向へ曲がるのと同じで、タイヤは傾いた方向に曲がっていきます。
そのことに対し、タイヤはグリップし、タイヤのケーシングはそれに持ちこたえています。
それがここでのタイヤの状態です。
このタイヤが傾いた角度をキャンバー角と言います。
4輪車の世界ではタイヤを垂直ではなく傾けてセットすることを「キャンバーを付ける」などと言いますが、ここで言うキャンバー角も、それと同じ意味の言葉です。
そして、キャンバー角を付けることで生じる、その方向に曲がって行こうとする力の事をキャンバースラストと呼んでいます。
キャンバースラストの大きさは、プロファイルやケーシングの剛性、グリップ力によって決まり、タイヤそれぞれの特性を持っています。
普通キャンバースラストは、キャンバー角に応じて大きくなっていきますが、キャンバー角の小さい範囲であれば良いのですが、キャンバー角に比例して大きくなっていっても、そのうち頭打ちとなります。
一般的にバイクのフルバンクは垂線から50度くらいが限界ですが、
(motogpの世界では64度が平均でマルク・マルケスは68度ですが・・・)
とてもそのキャンバー角まで比例関係を保つことはできません。



おまけに、バイクが曲がることで生じる遠心力は、バンク角に対し二次的に大きくなっていきます。
ですから、遠心力に対抗してタイヤが発生すべき曲がるための力はキャンバースラストだけでは不足してしまうのです。そのため、キャンバースラストの他にも曲がるための力が必要になってきます。

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